入浴者に合わせた介護浴槽と周辺機器選び・介助入浴の方法

介護浴槽は、主に病院や介護老人保健施設などに、介護が必要な高齢者の方や障害者の方が入浴するために設置されているお風呂です。この記事では、入浴する方の症状に合わせた浴槽や周辺機器の選び方、そして一般家庭でも役に立つ、介助入浴の方法についてご説明します。

介護浴槽と周辺機器について

介護浴槽は、病院や介護老人保健施設、サービス付き高齢者向け住宅に設置される、介護が必要な高齢者や、障害を持つ方のための入浴装置です。また、自宅での介護では、浴室や脱衣場などで使える介護用品をうまく活用すると用意すると、介護する人にとっても、される人にとっても、ストレスが軽減されるという効果が生まれます。

入浴者の状態に合わせた介護浴槽選び

介護が必要な方の症状や状態はそれぞれ違います。そのため、入浴機器もそれぞれの高齢者の方に適したものを選ぶ必要があります。この記事では、少しおおざっぱになってしまいますが、入浴者の症状を5つのタイプに分けて、それぞれに適した介護浴槽をご紹介します。

・寝たきりの方

寝たきりの方は、体の動作が限定されてしまいますので、スムーズで安全な介助を行うためには、ある程度の大きさがある、仰向けに入浴ができる介護浴槽が適しています。最近は、専用のストレッチャーに入浴する方を乗せ、浴槽内へのスライド移動させるモデルが販売されています。入浴者を浴槽内に移したあとは、ストレッチャーが介助者のための台になります。そのため、無理のない姿勢で体を洗ったり、髪を洗ったりすることが可能になっています。もちろん、入浴者の体格に合わせて浴槽の高さをワンタッチでコントロール可能な昇降機能も付いています。

・立つことは難しいが座ることはできる方

立つことは難しくても、座ることができる方であれば、座位タイプの介護浴槽が適しています。座位タイプの介護浴槽にもさまざまなものがありますが、最近目立つのはドッキング型。専用の車椅子と浴槽を直接ドッキングさせることで、入浴者は車椅子に座ったままお風呂に入ることができます。前向きで、スムーズにドッキング可能なので、入浴者はもちろん、介護者の作業ストレスは大幅に軽減されます。専用車椅子はリクライニングするので、洗髪、体を洗う、などのプロセスで姿勢を調節することも可能。また、このリクライニング機能に加え、浴槽自体の深さも十分にとられているため、肩までしっかり浸かることができるようになっています。

・補助があれば立てる方

立位補助用の手すり等があれば立てる方の場合は、座位タイプの介護浴槽だけではなく、リフト付きの介護浴槽を使うことができます。リフト付きの介護浴槽は、比較的コンパクトで、入浴者はリフトに付けられた椅子に座り、そのまま浴槽内に移動します。リフトにつり上げられることで、かんたんにお風呂の縁をまたいで入浴することができます。リフトは安全ベルト付きで安心。もちろん、自力でまたげるのであれば、リフトなしでの入浴も可能です。

・補助があれば歩ける方

補助があれば歩ける方なら、リフト付きの介護浴槽、もしくはスライド型リフトの補助により入浴することができます。リハビリなどで症状が回復すれば、自宅のお風呂に近い個浴型介護浴槽も視野に入ってきます。

・補助なしで歩ける方

補助なしでも歩ける方なら、自宅のお風呂にかなり近い、個浴型介護浴槽が適しています。個浴型介護浴槽は、サイズが比較的コンパクトなので、サービス付き高齢者向け住宅など、病院や老人保健施設以外にも設置が可能で、自宅での生活を視野に入れてリハビリに励んでいる方、さらに、すでに自宅で生活している方にも向いています。

自宅用入浴介護用品の選び方

ここからは自宅用の介護用品を選ぶポイントについてご紹介していきます。入浴用介護用品を選ぶ際も、介護を受ける方の症状や、浴室の状況などを考慮して選ぶといいでしょう。

・介護を受ける方の症状や状態

入浴介護用品を選ぶ際は、介護を受ける方の症状や体の状態を考慮して、適切なものを選択することが大切です。まず、介護を受ける方の要介護度を把握します。この要介護度により、手すり設置、リフト設置などの必要性を判断することができます。介護を受ける方の体格も考慮すべき材料の一つです。

・浴室内の状況

次に考慮しなければならないのが、浴室内の状況です。浴室の広さ、入口の間口の幅などを正確に把握し、検討中の介護用品が設置可能かどうかを判断します。設置が可能かだけではなく、実際の介護に必要なスペースがとれるかどうかも十分に検討してください。

・視認しやすいカラーを選ぶ

意外と盲点になるのがカラーです。高齢になり、視力に問題を抱える方は多くいらっしゃいます。ただでさえ滑りやすく危険な浴室ですが、湯気によって置かれている介護用品などが見えにくくなるとさらに危険です。介護用品は、なるべく高齢者の方でも視認しやすいカラーのものを選ぶといいでしょう。

個浴型介護浴槽について

ここからは、個浴介護浴槽についてご紹介します。最新型個浴介護浴槽は、介護度が比較的高い方でも利用できるようになってきているようですが、まず、個浴のメリットやデメリットについて考えてみましょう。

個浴のメリット

個浴は一人で入浴すること。つまり、周囲に気を遣うことなく、ゆったりとお湯に浸かることができると言うメリットがあります。また、手術痕や麻痺などを他人に見せたくないという方も多くいらっしゃいますが、そんな場合でも個浴なら、周囲を気にする必要はありません。高齢になると、浴槽の中で失禁してしまう方もいらっしゃいますが、そんな際でも個浴ならすぐにお湯を入れ替えることができます。何より個浴は自主性が重視されるため、高齢者に「入浴する」というやりがいを与えます。自立を目指す方にとって個浴は、たいへん大きなメリットがあります。

個浴のデメリット

個浴のデメリットは、まず、お湯を小まめに入れ替えなければならないこと。一人で使うのであれば問題はありませんが、利用者が多い場合は水道料金がかかるというデメリットになります。また、自立を目指す、比較的要介護度の低い方には適している個浴ですが、個浴型介護浴槽は要介護度の高い方は、かなり入浴が難しくなります。介助する側もたいへんな作業になります。

最新型個浴介護浴槽

個浴には以上のようにメリットもデメリットもありますが、最新型の個浴介護浴槽は、デメリットをカバーするような特徴や機能を搭載しているようです。最新型の個浴介護浴槽は作りがとてもコンパクト。そのため、サービス付き高齢者向け住宅など、小さな施設でも設置可能です。また、ユニットバスに取り付けられるモデルもあります。

介助入浴の方法

ここからは、自宅でできる入浴ケアのポイントをご紹介します。

・浴室と脱衣場の温度管理と浴槽の準備

高齢者の方に安全に入浴してもらうために大切なのが温度管理です。特に冬場は入浴後、浴室と脱衣場の温度差による事故が多発します。冬場は脱衣場に小型の暖房器具を設置するなどして暖めておきましょう。また、スリップを防ぐためのマットや補助器具も必要に応じて用意します。

・着替えと入浴に使う道具の用意

着替えとソフトなスポンジなど、やさしく体を洗えるグッズを用意します。

・お湯の温度を確認

浴室と脱衣場だけでなく、お湯自体の温度管理はひじょうに大切です。高齢の方は、温度に対する感度が落ち、熱さを感じていないのに火傷してしまうこともあります。

・石けんやシャンプーは刺激の少ないものを選ぶ

高齢者の入浴介助をする場合は、肌に刺激の少ないシャンプーや石けんを選びましょう。弱アルカリ性のものがおすすめです。